Mika音楽教室の生徒のSちゃん。
つい最近まで、検定にも積極的にチャレンジし、これまでに5回も表彰されるほど、本当によく頑張ってきました。
はじまりは、とても順調でした🌱
ところが12月に入った頃、突然「ピアノを辞めたい」と言い出したのです。
「どうして?」と、私なりに理由を聞いてみても、返ってくるのは沈黙ばかり。
ピアノの前に座ると、ただ泣いてしまう…。
そんな状態が、3週間ほど続きました。
突然の「辞めたい」という言葉😢
これまで前向きに取り組んできた姿を知っているだけに、私自身も戸惑い、心配し、正直どう関わるべきか悩みました。
そして半ば、「ここまで嫌なら、無理に続けさせるのも違うのかもしれない」と、諦めかけていたのです。
それでも――
Sちゃんの中で、きっと言葉にならない何かが起きている。
そう感じながら、私はもう少しだけ、そっと見守ってみようと思いました。
見守ることしかできなかった時間
ちょうど12月の最後のレッスンの頃、私自身が体調を崩してしまい、2025年最後のレッスンは予定より1週間早く終わることになりました。
結局その日まで、Sちゃんは一言も声を聞かせてくれないまま…。
そのことがずっと心に引っかかったまま、年を越すことになりました。
「年が明けたら、少し元に戻っているかな」
そんな小さな期待を抱いていましたが、年明けのレッスンでも、Sちゃんの表情は暗いまま。
やはり「辞める」と言っていると聞き、私も「仕方ないのかな…」という気持ちになっていました。
小さなきっかけが、心を動かした🎄
そんな中、レッスンの終わりに、ちょうどクリスマスの話題になり、
「サンタさんには何をお願いしたの?」と、ピアノとは全く関係のない角度から話を振ってみました。
すると――
それまでほとんど言葉を発しなかったSちゃんが、ぽつりと口を開いてくれて、
「Switch Liteの、どうぶつの森」と教えてくれたのです。
その一言が、私にはとても嬉しくて。
Sちゃんの心の扉が、ほんの少しだけ開いた瞬間のように感じました。
そして――
奇跡が起こりました。
音楽は、ちゃんと消えていなかった🎶
なんと、私がたまたま「どうぶつの森」の楽譜を持っていたのです。
「え!先生、これ知ってるの?」
そんな空気が一瞬で伝わってきました。
その楽譜を広げながら、
「そのゲームって、どんな曲なの?」と声をかけ、
YouTubeを開いて、一緒に音楽を聴いてみることにしました。
すると、今までとはまるで別人のように、
Sちゃんは身を乗り出し、目を輝かせながら、
せき切ったように話し始めたのです
その姿を見て、
「あぁ、Sちゃんの中から“音楽”が消えていたわけじゃなかったんだ」
と、胸が熱くなりました。
ピアノが嫌だったのではなく、
言葉にできない気持ちが、少し重なっていただけなのかもしれません。
子どもたちは、ちゃんと心の中に“好き”を持っていて、
それを安心して出せるきっかけを、待っているのだと、
改めて教えてもらった時間でした。
「これ!今やってるゲームの曲はこれ!」
そう言って、Sちゃんは自分でYouTubeを開き、曲を教えてくれました。
一緒に音楽を聴きながら、私は思わず、
「じゃあさ、先生がこの曲、楽譜に書いてあげようか?」
と声をかけてみました。
すると、満面の笑顔で
「うん!!」
と、即答。
2人で曲を何度も聴きながら、私がノートにさっと手書きで楽譜を書いていきました😊
音を確かめながら、同じ時間を共有するその空間は、とても穏やかで温かいものでした。
ちょうどその時、お母さまがお迎えに来られたので、
「すごいですよ!今日はたくさん話してくれました。
好きな曲を教えてくれたので、ノートに楽譜を書いてあげているんです!」
とお伝えしました。
そしてSちゃんにも、
「ちょっとお家で弾いてみてね💕」
と声をかけると、いつものようにきちんと挨拶をしてくれて、
「また来週ね!楽しみにしてるね!」
と言うと、にこっと笑って手を振り、帰っていきました。
あの「辞めたい」という言葉が嘘のような、穏やかな後ろ姿でした。
ピアノが続くかどうかよりも、
まずは「音楽って楽しい」「好きな気持ちを出していい」
そう感じてもらえたことが、何より嬉しい出来事でした。
音楽は、無理に引っ張るものではなく、
その子の“好き”に寄り添ったとき、
自然とまた近づいてきてくれるものなのだと、
Sちゃんが教えてくれました。
「辞めたい」の本当の理由
そして、その日の夜。
お家に帰ってから、まさかの出来事があったそうです。
あれだけピアノに向かわなかったSちゃんが、
自分からすぐにピアノを弾き始めたと、
お母さまから嬉しい連絡をいただきました。
その報告を聞いたとき、私は本当に嬉しくて、
胸がいっぱいになりました。
さらに――
その姿を見たお母さまが、こんなふうに声をかけてくださったそうです。
「先生が書いてくれた楽譜はト音記号だから分かって楽しいの?
左手のヘ音記号は嫌なの?」
するとSちゃんが、はじめて本音を口にしました。
「ヘ音記号は、分からないから嫌だった。」
それが、
「辞めたい」と言い続けていた理由だったのです。
きっとSちゃんの中では、
「できない」「分からない」「でも言えない」
そんな気持ちが、少しずつ積み重なっていたのだと思います。
でも、
自分の“好きな音楽”
自分の“知っている世界”
から入ったことで、心がふっと軽くなり、
「やってみよう」と思えた。
そして、やっと言葉にできた。
Mika音楽教室が大切にしていること🎹
子どもは、サボりたいわけでも、やる気がないわけでもなく、
分からないことを、分からないと言えないだけ
ということが、たくさんあります。
今回のSちゃんの出来事は、
「辞める・続ける」よりもずっと大切なことを、
私自身にも改めて教えてくれました。
Mika音楽教室では、
その子の気持ち・ペース・「好き」の入り口を大切にしながら、
音楽と、そしてピアノと、
もう一度出会い直せるレッスンを心がけています。
Sちゃんが、笑顔で手を振って帰っていったあの姿を、
私はきっと、ずっと忘れません。